原子力発電設備(原子炉)における損傷には下記のものがあります。
- 自然腐食
金属は、地球上に化合物(酸化物、硫化物など)として存在していますが、還元(精錬など)されて、工業的に利用されています。従って酸素が存在する自然界においては、酸化物に戻ろうとします。この現象を自然腐食と呼びます。 - 疲労
全て材料は、静的負荷では破損しないレベルの応力でも、繰返し応力が負荷されると破断します。これを疲労と呼びます。 - 乾食
金属が酸素,水蒸気(気体状態),炭酸ガスなどの反応性気体との接触で直接反応し,金属表面に反応生成物(酸化物)の固体被膜を生成しながら金属が消耗する現象です。 - 湿食
気体中で材料が溶出する乾食に対して、液体中で材料が溶出するのを湿食と呼びます。液体成分と材料(コーティングなど防食対策を含む)の組み合わせで、腐食の度合いが異なります。 - 応力腐食割れ
腐食は、材料が環境中に溶出する現象です。通常の腐食は、全面的あるいは局所的に材料が溶出して肉厚が減少しますが、一定の応力下で、非常に狭い領域でき裂状に腐食が進行する現象を応力腐食割れと呼びます。環境、材質、応力の3条件が揃った条件で発生します。 - エロージョン
流体の繰り返し衝突(または衝撃)により材料が機械的に損耗を受け、その一部が脱離していく現象をエロージョンと呼びます。 - 摩耗
固体材料同士が、擦れ合う状態で使用されている場合、どちらか(または両方)が損耗し、肉厚が減少していく現象を摩耗と呼びます。 - 材質劣化
金属は、使用開始時に最適の特性を示すように調整(熱処理などによって)されて使用されています。常温では、原子の移動が起きないため特性の変化は起きませんが、高温では、原子がエネルギー的に安定な状態に移行するために特性の変化が起きます。この変化は使用上不都合なもの(例えば材料強度、延性、耐食性の低下)が多く、長期の使用後に事故の原因となります。この特性低下を材質劣化と呼びます。